WORKS

ノムラメディアス meets 日本橋

日本橋髙島屋、90年の誇りと
革新をかたちに。老舗百貨店、
歌舞伎名門家との共創ストーリー

空間プロモーション 2023.01〜2023.06

1933年3月、商業の街に誕生した日本橋髙島屋は、長きにわたり人々の賑わいを創り出してきた。2023年に、開店90年の節目を迎えるにあたり、記念イベントの企画から運営の伴走者となるパートナーを探していた。
検討の結果、選ばれたのはノムラメディアスだった。ノムラメディアスは、30年にわたり髙島屋の催事場の設営や店内装飾を担当。記念イベントは過去に他店舗で2度担当した実績を持つ。
90年記念イベントの統括責任者で、企画宣伝部の森 裕紀氏(当時部長)は、「ノムラメディアスは、私たちが実現したかった体験価値を理解したうえで、新しいアイデアを提供してくれました」と振り返る。
日本橋髙島屋が目指していたのは、創業からの90年を支えてきたお客様への感謝の気持ちを表すこと、コロナ禍で停滞した賑わいを日本橋に戻すこと、百貨店に馴染みのない層へのリーチだった。そして、決めていたのは、「過去・現在・未来」を3期にわたり表現すること。
これらの要望を受けてプレゼンを担当したプランナーの津田華子は、アカウントプロデューサーとして日本橋髙島屋を17年間担当する八代智仁と打ち合わせを重ね、90年企画の背景にある要素を「リアルの体験価値」「世代を超えて継承される想い」「活気あふれる江戸の町・日本橋」の3つに整理。日本橋髙島屋の長い歴史と伝統に着目し、「型破り」をコンセプトに立てた。
型破りとは、知識や技術に裏打ちされ、積み重ねた歴史や伝統にならった基礎の「型」を学び、打ち破った者のこと。日本の伝統芸能の世界で使われる表現だが、津田は「日本橋髙島屋の伝統や品格を大切にしながら、時代や生活者にあわせて変化や挑戦を続ける姿勢に通じるものを感じた」と振り返る。
このコンセプトの具現化に適した象徴として思い浮かんだのは、二代目 松本⽩鸚、十代目 松本幸四郎、八代目 市川染五郎の三代が看板の歌舞伎界の名門「高麗屋」だった。意図について、津田はこう語る。
「日本橋髙島屋様の賑わいを取り戻すには、従来のお客様はもちろん、新しいお客様を含めてのコミュニケーション設計が必要になります。このバランスを取るにはどうしたらいいのか、日本橋のこれからのお客様層に受け入れられる存在を検討した結果、高麗屋がその象徴になると考えました。伝統を受け継ぎ、紡ぎ続ける高麗屋の三代に、日本橋髙島屋様のあるべき姿や大切にしている想いを表現して欲しかったのです」

meets

日本橋髙島屋の歴史と
歌舞伎を重ねた
「型破り」のコンセプト

日本橋髙島屋 企画宣伝部 森 裕紀氏(当時部長)
日本橋髙島屋 90周年の屋外懸垂幕
ノムラメディアス アカウントプロデューサー 八代 智仁
meets

日々通い、知り尽くした店舗。
その空間を活かした演出に挑戦

「型破り」のコンセプトや高麗屋を象徴に据えた提案を受けた森氏(当時部長)は「まさにわれわれがやりたいと思っていたこと」と深く共感。こうしてノムラメディアスが参画し、日本橋髙島屋90年記念プロジェクトが始まった。
リアルの店舗だからこその「魅力」を感じてもらうには、どの場所で、何を表現したらいいのか。津田は、クライアント窓口としてほぼ毎日店舗に足を運んでいる八代と常に連絡を取りながら、コンセプトの具現化に着手していった。
緊密な連携を実現できたのは、これまでに日本橋髙島屋と築いてきた関係性が大きな要因の一つだ。イベントの具体化に向けた議論から現場の段取りまで、店舗を熟知しているからこそ理解・提案・対応できることもあったという。
イベントの計画段階から設営まで、隔週で定例ミーティングを実施し、全体の進捗状況などを確認。森氏(当時部長)や企画宣伝部の担当者と何度もディスカッションを重ね、弊社デザイナーがデザインに起こす、というサイクルを回しながらクリエイティブを固めていった。特に、館内についての八代の知見は、クリエイティブを詰める上で大きく寄与した。八代はこう話す。
「ウィンドウのリアルなサイズ感は、装飾を考えるにあたり重要な要素です。インパクトを出し、かつコストとのバランスを取るには、どの場所にどのサイズの装飾を施すべきか、というのは重要なポイントです。特にクオリティを保つことを念頭に置いて、髙橋(弊社デザイナー/長年日本橋髙島屋のウィンドウディスプレイを担当)に情報を伝えるようにしていました。それはこれまでの経験や感覚を生かせた部分だと思います」
デジタルが及ばないリアルならではの体験価値は、「賑わいや空気感」にこそある。それに加えて森氏(当時部長)は「奥行き」の重要性を挙げる。「立体の奥行きはリアルでしか表現できないので、実際に生で見ないと良さを理解できません。ノムラメディアスは、日本橋髙島屋のリアルな空間に向き合ったうえで、奥行きのクオリティを追求してくださったのだと思います」
森氏(当時部長)は、「企画を詰める段階からお互い想いを共有できたところが良かった」と振り返る。
「お互い『表現したいこと』の目線が揃っていたからこそ、活発な意見交換ができました。90年にかけるわれわれの想いと、ノムラメディアスのアイデアがプロジェクトの初期段階からしっかりリンクしていたからこそ、ゴールに向けて、お互い誠実に向き合うことができました」

  • 「松本幸四郎家 高麗屋展」弁慶の展示
  • 「八代目 市川染五郎が描いた弁慶の絵」

2023年1月2日の初売りを皮切りに約半年間、様々なイベントが開催された90年記念イベント。やはり話題の中心になったのは、イメージキャラクターの高麗屋三代。歌舞伎俳優の二代目 松本⽩鸚、十代目 松本幸四郎、八代目 市川染五郎だ。
津田は日本橋髙島屋からの「3期を過去・現在・未来のテーマに分けて展開する」という要望を、「感謝・感動・感喜」に再定義。第1期はお客様への「感謝」、第2期はお客様にお届けしたい「感動」、そして第3期は、お客様と共に未来を描き、歩み続けられることへの「感喜」をテーマに設定した。
高麗屋とのコミュニケーション面も担当した津田は「90年記念イベントのテーマと高麗屋の継承するものの根本にあることがしっかりリンクする展覧会にしたい」と奔走する中、350年続く高麗屋の歌舞伎に息づく精神、一つひとつのモノづくりに対する高い意識を目の当たりにしたという。
「松本幸四郎さんは、アイデアに富んだ方で、それを具現化するためにわれわれの長年培ったディスプレイの力が発揮されました」
アイデアの具現化の中の一つが、マネキンに歌舞伎の演目のポーズをとらせる「場面再現」の展示だ。津田は実現に向けてのやりとりを明かす。
「制作チームは、歌舞伎の鬘(かつら)や衣裳の制作者さん、床山さん(髪を結う職人の方)と打ち合わせを実施。歌舞伎の鬘や衣裳は重量があるため、マネキンの展示方法が難しかったが、臨場感を出したいという想いから、関節可動式マネキンの選定、鬘に合うように頭に加工するなどの試行錯誤を重ね、細部に至るまで丁寧に向き合いました」
もう一つの挑戦は、18歳にして歌舞伎界の次世代ホープとして熱視線を注がれている八代目 市川染五郎の「弁慶」だ。歌舞伎の演目「勧進帳」に登場する弁慶は、高麗屋の当たり役として代々受け継がれてきた。高麗屋にとって弁慶は特別なもの。それは松本幸四郎家に代々受け継がれる強い思いの源だった。

meets

丁寧な対話で歌舞伎の名門
「高麗屋」の想いをのせる

二代目松本白鸚 『菅原伝授手習鑑』「寺子屋」 場面再現展示
「勧進帳」×現代アート コラボレーションウィンドウ「伝統と革新」

それは、やはり、八代目 市川染五郎にとっても同様に、特別な想いがあった。染五郎は幼少期から美術が得意で、様々な役柄や舞台の情景を描いており、特に弁慶の作品は度々描いてきた。
その弁慶への想いを知る十代目 松本幸四郎は、高麗屋に受け継ぐものの象徴として、「染五郎の弁慶」を展示するアイデアを提示。代々受け継がれた八代目 市川染五郎の中にある弁慶への情熱を5m幅にもわたる巨大な絵画作品として制作し展示した。
実際に展示する現場にも、本人たちが足を運び、展示品の配置やバランスなど納得いくまで検討するなど並々ならぬこだわりがあったという。
何度も打ち合わせを重ねながら一緒に作り上げる中で、「型破り」のコンセプトが、少しずつ研ぎ澄まされていった。その過程において、津田には、特別な使命感があった。それは、対話を通して日本橋髙島屋と高麗屋の想いを丁寧に重ね合わせることだ。
「高麗屋様の想いをきちんと落とし込んでいくことが、90年企画のテーマを強く発信することにつながり、ひいては日本橋髙島屋様の企業ブランディングになると確信していました。可能な限り何度も打ち合わせを重ねながら、一緒に創り上げていきました」

ノムラメディアス プランナー 津田 華子
meets

クライアントと想いを共有、
伴走して実感した、日本橋の賑わい

こうして完成した開店90年記念特別企画展「松本幸四郎家 高麗屋展 松本⽩鸚・松本幸四郎・市川染五郎 -世代をこえて継がれる、ひとつの絆-」は、高麗屋の三代にも「松本家にとって素晴らしい展示になった」と会心の出来となった。
森氏(当時部長)は「モノづくりとコトづくりのクオリティの高さが光っていました。上質な文化に精通するお客様にもお褒めの言葉をたくさんいただきました」と手応えについて語る。
実施期間半年のうち、イベント、キャンペーン、映像制作、展示まで、ノムラメディアスがその多くに携わり、森氏(当時部長)のもとでプロジェクトを統括。並大抵の量ではない情報共有やコミュニケーションを実現できたのは、一つひとつの施策のリスクヘッジや、日本橋髙島屋とのフォローし合える関係性の構築にある。森氏(当時部長)はこう話す。
「プランナーである津田さん、窓口として制作物や現場の進行管理をまとめてくださった八代さん、関わる皆さんのパーソナリティはとても重視していました。今回の90年記念イベントは、われわれがしっかり現場を見て、お互いに意見交換をしながら進めていくうえで、信頼関係は重要なポイントです。その意味で、誠実に向き合ってくださるお二人に担当していただけて本当に良かったと思っています」
「共にプロジェクトを作り上げるパートナー」としてノムラメディアスを認め、また、津田と八代もそれに応えるように強いコミットメントでプロジェクトを推進したことで、イベントに「日本橋髙島屋らしい華やぎ」がもたらされた。
メディアにも取り上げられ、多くの人が足を運んだ90年記念イベントは、日本橋髙島屋の歴史に新たな1ページとして加わった。成功の裏側には、企業の歴史や現状、日本橋という地域柄を深く見つめ、プロジェクトメンバー同士、丁寧に向き合ったプロセスがあったのだ。ノムラメディアスは、これからも世の中やクライアントの課題と真摯に向き合い、持ち前の伴走力で想いをかたちにしていく。

  • 「松本幸四郎家 高麗屋展」 導入演出
  • 「門出祝寿連獅子」の展示
  • 八代目 市川染五郎の絵画作品展示
CREDIT
  • 株式会社ノムラメディアス
  • アカウントプロデューサー:八代 智仁、熊坂 龍人、髙瀬 智和、根本 匠悟
  • プランナー:津田 華子、坂本 結実
  • デザイナー:髙橋 祝子、吉村 順次、藤井 丹路子、井上 博未
  • 運営:小沼 義和
<出演・作品提供>
高麗屋(株式会社シアターナインス、株式会社Koma.)、松竹株式会社、銅版画家 入江 明日香、水引アートクリエイター micono、藤子プロ、藤子・F・不二雄ミュージアム、小学館集英社プロダクション、東北ユースオーケストラ、PAN NOTE MAGIC、クラシックデュオ スギテツ
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その他の実績

ノムラメディアス「11」のソリューション

  1. プランニング

    お客様の想いや課題を分析し、様々なアイデアでコンセプトづくりから詳細なプラン、コンテンツ企画のご提案します。

  2. 設計

    デザインで表現されたお客様の想いをかたちにするため、図面や仕様書を作成し、より具体化させます。

  3. デザイン

    お客様の想いを空間やコンテンツで表現し、具現化します。

  4. 制作・施工

    正しい知識と判断で、品質・安全・環境に配慮しながら制作・施工管理を行い、プロジェクトの実現へ導きます。

  5. 商品開発

    消費者のニーズを調査し、求められる商品を空間のコンセプトやイメージに合わせ、計画・開発します。

  6. POP・ノベルティ

    セールスプロモーションツールやノベルティ企画・制作し、消費者の購買意欲促進につなげます。

  7. 保守管理・メンテナンス

    安心安全な体験・演出を提供できるよう、日々維持管理を行い、点検、修理、機器交換を行います。

  8. イベント運営

    イベントの効果を最大化させるため、空間づくりから集客・接客サポートまでトータルで計画・実施します。

  9. 店舗運営

    店舗コンセプトに基づいた売り場づくりを行い、店舗の世界観を大事にした日々の運営管理を行います。

  10. コンテンツ制作

    映像・造形・キャラクターなど、お客様の事業を支えるオリジナルコンテンツを企画・制作します。​

  11. システム設計・機器設置

    デジタルコンテンツを支えるさまざまな演出システム機器の構築・設置を行います

内部通報窓口 (コンプライアンスに関するご連絡)

乃村工藝社グループでは、不正行為の未然防止、早期発見および是正を図ることを目的に、内部通報窓口を設け、公益通報者保護法に基づいて運用を行っています。
この窓口は、乃村工藝社グループおよびその仕入先、下請業者等の役職員(通報日時点で在籍中または通報日前1年以内に在籍していた役員、正社員、契約社員、嘱託社員、パート、アルバイト、インターンおよび派遣労働者)から、乃村工藝社グループの役職員による乃村工藝社グループの業務における、法令違反行為、社内規定違反行為および企業倫理等違反行為に関する通報(匿名によるものも可)を受け付けるものとして、外部の弁護士事務所内に設置しています。
なお、乃村工藝社グループは、通報者が通報したことを理由として、通報者に対していかなる不利益な取扱いも行いません。
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