WORKS
ノムラメディアス meets 商品開発
国内外の観光客の期待に応える、
ショップ運営
ショップ&イベントマネジメント
2019.4-
東京都庁45階、都内を一望できる展望フロアのショップ&カフェ「TOWNGATE CORE TOKYO 都SEEN(以下、都SEEN)」が今、海外観光客の間で注目を集めている。2019年にオープンし話題となるも、間もなくコロナの影響を受けて一時休業。2022年10月に営業を再開したところ、客層が以前と変わっていることに気がついた。
以前はアジア圏、特に中国からの観光客が多かったものの、営業再開後は欧米からの来訪者の割合が明らかに増えている。属性が変わったということは、利用者がこの店舗に求めるものも変わっているのではないか。店舗運営を担当するアカウントプロデューサーの小沼義和は、「インバウンド向けの商品は以前から意識的に多く取り揃えていましたが、よりお客様にフィットした商品を提供したいと考えるようになりました」と当時の課題感を語る。普通の土産物店ではなく、ノムラメディアスらしいショップであり続けるために必要なのは、目の前のお客様をもっと知ること。こうして、2023年夏からインバウンドリサーチプロジェクトが始動した。
リサーチは、アンケート会社に委託する形で実施した。実際に都SEENを訪れた海外観光客に直接声をかけ、英語でヒアリングを行う。日本に来た回数、どこから来たかといった背景情報から、商品構成や価格など都SEENへの満足度、どのような場所を訪れたか、これからどこへ行く予定かといった内容まで質問項目は多岐にわたり、合計約360名の方にお話を伺うことができた。
都SEENへの満足度は高く、「無料で入場できる」「清潔で居心地が良い」「夜景が美しい」という声が多く、観光客の間で口コミが広がっている。
また、中国や台湾をはじめアジア圏からのインバウンドには発着便数の多い関西国際空港が多く利用されるのに対し、欧米、オーストラリアなど英語圏から訪れる観光客は成田空港から東京へアクセスする傾向にあることが分かってきた。アジア圏の観光客が友人や家族と連れ立って賑やかに観光するのに対し、欧米圏の観光客はカップルなど少人数で静かに楽しむことを好むようだ。リサーチを通じて、来訪者の属性が入れ替わった背景が浮かび上がる。
大きな気付きとなったのは、「都SEENは浅草の土産物店より商品が安い」という声。それはリーズナブルであると好意的に捉えられる反面、彼らがもう少し高い価格帯を想定しているということでもある。好まれる商品は富士山や桜など、日本の伝統的なモチーフのもの。また、インバウンド観光は数ヶ月単位の長期滞在が多く、大きな荷物や重い荷物は敬遠されがちだということも分かった。これらの貴重なヒアリングデータを参考に、ノムラメディアス内で新たな商品開発プロジェクトが動き出した。
アフターコロナの
インバウンドリサーチから
着想を得た商品開発
アートだるまでテストマーケティング
インバウンドをターゲットとした高単価商品の開発事例は、これまでにもサントリー美術館、三井記念美術館などのミュージアムショップで存在する。10万円以上の茶器のセットがいくつも売れ、国産材を使った積み木のようなオブジェが数十万円で売れたこともあった。当時の経験から、シニアアドバイザーの中川雅寛は「古いか新しいかを問わず、質の高いものを適切な価格で販売することは店舗のブランディングにもつながります」と高単価帯を模索する意図を解説する。
持ち帰りやすく、高単価を狙える伝統的な商品――。実はいくつか候補があった。たとえば、招き猫は既存ラインナップにもあり、実際売れている。しかし今さら置いたところで個性が出ない。そこで白羽の矢が立ったのが、張り子で軽く、さまざまな色で彩られるだるまだった。店名の『都SEEN』は都心にあること、そして見る、見物するという意味のseenを掛けた言葉。自分の目で見ることのリアリティがだるまの目に通じるのではないか、オリジナルのだるまは都SEENらしいお土産としてぴったりなのではないかと考えたという。
あくまでテストマーケティングとして、企画をした中川が趣旨を説明したところ、アーティストやデザイナーなど、約20名が企画に参加。思い思いのテーマで装飾を施しただるまは「アートだるま」と名付けて都SEENに並べられた。
この企画の反響は小沼も肌で感じるほど。「かなり話題になっている。先日も、参加したデザイナーに『だるま、売れましたか』と聞かれました」と嬉しそうに打ち明けた。
だるまは和柄、モダンな柄、絵画のような描写から抽象的なデザインまで多種多様で、なかにはすでに完売した商品も。キャラクターを模したポップなだるまもあり、従来の古典的なイメージから逸脱して生み出す独自の世界観は見る者を惹きつける。「タイトルに『アート』と付けたのは自由に展開してほしいから。工芸と位置づけると精緻なものでなければ価値がつきにくい。今回は自由すぎるぐらい自由な作品が集まった。もう少しインバウンドを意識した伝統的な柄に寄せてくれてもよかったんじゃないか」と冗談交じりに話す中川も、個性豊かなだるまの行列を誇らしく眺めた。
価格は1万円台から3万円台、少し大きな作品はそれ以上の価格のものもある。子供などが触ったり壊したりするのではないかと心配になるが、木の柵で囲うだけでアクリルケースに入れるようなことはしていない。近づいて細部まで覗き込みながら、ラウンジ席に腰掛けて華やかな全体像を眺めながら、来場者が思い思いにアートだるまを楽しむ光景が都SEENの新たな日常になりつつある。
ノムラメディアスはこれまで、「ショップのテーマに基づいてものを作る」という形で商品開発を行ってきた。美術展を回った後、ミュージアムショップで展示品をモチーフにしたポストカードやクリアファイルなどを購入した経験がある人も多いだろう。都SEENでは、アートだるまがその役割を担う。都庁を訪れた思い出、東京全体を一望した記憶。空間体験で得た感動や喜びを持ち帰る役割を果たしている。「だるまは自分の思いや願い事を目入れに託すもの。その時の自分の気持ちが投影され、持ち帰った際には土産話というコミュニケーションが生まれる。そういう意味で、だるまは一つのメディアと言うことができるのではないか」と中川は語る。
今後は、小型のだるまに観光客自身が絵付けをするミニワークショップも視野に入れているという。「最初は商品を売ることで価値を提供していたが、今度はお客様自身が付加価値をつけ、日本の思い出を持ち帰るという体験を提供したい。私たちは土産物店という立場ですが、いろいろな可能性が考えられると思います」と、だるまに手応えを感じている。今回のプロジェクトはテストマーケティングの意味合いも強かったが、これによって生産ラインの試算もできた。本格的にブランド形成へと動き出し、売れ行きが良ければ他店舗への展開も見据えている。
また、都SEENにはカフェテーブルやベンチシートも設置されており、来場者が「次はどこに行こうか」と地図を広げる光景もよく見られる。リサーチでも「どの街に行くと面白いのか、どこで何を買えるのか、分かるようなものが欲しい」という声が多く挙がった。そこで制作されたのが、東京を中心に日本のランドマークを描いた現代風絵巻だ。目的地を調べるだけの地図はアプリなどデジタルの力で進化したが、絵巻のようにパノラマで全体像が見られるものは現代においても他にない。土産品として購入できる手ぬぐいとポストカード、さらに記念撮影ができるよう、エレベーターホールに大判の絵巻を掲示しフォトスポットとした。
「商品開発では常にその場所との連携、親和性を大切にしている」という小沼は、「絵巻は、東京の景色が見える展示フロア、そして日本的な商品を求めるインバウンドとも親和性が高い。この場所だから手に入る、この場所に来たことを思い出せる商品として、お客様がお土産として持ち帰った後に記憶を呼び起こすものになれば良いなと思います」と絵巻にも期待を込める。
思い出を持ち帰る
“メディア”として
空間活性化を行う
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CREDIT
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- 店長:齋藤 有希
- 運営:小沼 義和
- シニアアドバイザー:中川 雅寛
その他の実績
ノムラメディアス「11」のソリューション
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プランニング
お客様の想いや課題を分析し、様々なアイデアでコンセプトづくりから詳細なプラン、コンテンツ企画のご提案します。
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設計
デザインで表現されたお客様の想いをかたちにするため、図面や仕様書を作成し、より具体化させます。
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デザイン
お客様の想いを空間やコンテンツで表現し、具現化します。
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制作・施工
正しい知識と判断で、品質・安全・環境に配慮しながら制作・施工管理を行い、プロジェクトの実現へ導きます。
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商品開発
消費者のニーズを調査し、求められる商品を空間のコンセプトやイメージに合わせ、計画・開発します。
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POP・ノベルティ
セールスプロモーションツールやノベルティ企画・制作し、消費者の購買意欲促進につなげます。
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保守管理・メンテナンス
安心安全な体験・演出を提供できるよう、日々維持管理を行い、点検、修理、機器交換を行います。
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イベント運営
イベントの効果を最大化させるため、空間づくりから集客・接客サポートまでトータルで計画・実施します。
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店舗運営
店舗コンセプトに基づいた売り場づくりを行い、店舗の世界観を大事にした日々の運営管理を行います。
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コンテンツ制作
映像・造形・キャラクターなど、お客様の事業を支えるオリジナルコンテンツを企画・制作します。
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システム設計・機器設置
デジタルコンテンツを支えるさまざまな演出システム機器の構築・設置を行います