WORKS

ノムラメディアス meets からくり時計

16年の時を超えて蘇る、
からくり時計と街のにぎわい。
ノムラメディアスが紡ぐ技術と思い出

展示演出・メンテナンス 2021.06-

古くから日本で親しまれてきたからくり時計。人形劇の上演や音楽を奏でる機能を兼ね備えた時計は、多くの庶民の心を掴み、生活に溶け込んできた。アナログからデジタルへ時代が移り変わった今もなお、駅や百貨店などに飾られているからくり時計は、行き交う人々を見守りながら時を刻み続けている。
神奈川県横浜市中区、イセザキ・モール 1・2St.(伊勢佐木町1・2丁目商店街)にも、街のシンボルとして長年愛されてきたからくり人形時計がある。
鐘を鳴らす神父、ふるいをかける農婦、パンを焼くパン職人、鉄を打つ鍛冶職人など、中世ヨーロッパのタウンピープル9体をかたどったブロンズ風の人形が、哀愁漂うバロック調の音楽と共に回転する。当時、日本ではまだ珍しかったからくり人形時計の先駆けとして、時を刻んできた。一度は故障したものの、2021年6月10日の「時の記念日」に16年ぶりに再び時を刻み始めたからくり人形時計。復元し、その後のメンテナンスも担当したのは、ノムラメディアス(旧:ノムラテクノ)だ。時代を超えて愛される街のシンボルはどのように蘇ったか、イセザキ・モール 1・2St.専務理事 石田隆氏と振り返る。
イセザキ・モール 1・2St.は、以前アーケードがある車の通れる商店街だったが、1978年、街の再開発事業の際にオープンモールとなった。その際、記念モニュメントとしてからくり人形時計を乃村工藝社が制作。しかし、2005年頃に故障し、修繕の目処が立たないために16年もの間、そのままになっていた。しかし、コロナ禍で転機が訪れる。モールでは年250回ほど、大道芸やお祭りなどのイベントを開催していたが、コロナ禍でイベントが開催できなくなり、その費用をからくり人形時計の修復に充て、街の賑わいを復活させようとの意見が廣井晴雄氏(当時理事長)から出た。
ノムラメディアスの親会社である乃村工藝社は、50年ほど前からからくり人形時計の制作を行い、からくり時計ブームの火付け役となった有楽町マリオンや、そごう各店のからくり人形時計も手がけてきた。また、それらの保守・メンテナンスはノムラメディアスが担当している。なかでもイセザキ・モール 1・2St.のからくり人形時計は、乃村工藝社が手がけたからくり時計の記念すべき第一号だったこともあり、復元に向け、より意気込みが強かった。

meets

からくり時計という
日本文化を守る

イセザキ・モール 1・2St. 専務理事 石田 隆氏
  • 復元前のからくり人形
  • 復元後のからくり人形

からくり人形時計の復元にあたり、出来るだけ制作当時のものに戻したいという希望があった。外観や部品といった「形」は当時のまま残っていたが、課題となったのは「色」と「音」だ。「現在のようにデータ化された時代ではありませんから、図面が残っておらず、制作当時のスケッチが数枚残っているのみ。経年劣化もありますし、何度か色を塗り直しているので、最初の色はわかりません。また、音源テープも行方不明。曲は、地元の有名な作曲家である増田豊さんが作られたものでしたが、すでにお亡くなりになっていました」とテクニカルディレクターの小林敬治は当時の様子を振り返る。
からくり人形時計で流れる音楽は3分にも及ぶ。かつてイセザキ・モール 1・2St.にあった百貨店で働いていた石田氏は音源がなくてもメロディの一部は口ずさめるというが、それだけでは完全な復元は難しい。
そこで小林は、すでに退職していた乃村工藝社のスタッフを尋ね、工場で一緒に色を塗りながら記憶の糸を手繰り寄せてもらった。 また、当時放送されていたテレビドラマの撮影に使用されたイセザキ・モール 1・2St.の映像を見返すなど、あの手この手で、当時の色を再現していった。音源についても、イセザキ・モール 1・2St.の事務所を捜索し、埃の溜まった予備テープを一本だけ見つけることが出来たことで、データ化を行い復元することができた。
「完成間近、工場へお伺いしましたが、ここまでやるのか、と小林さんをはじめとするみなさんの熱意に驚きました。われわれは単純に復元すればいいと依頼したわけですが、色や形、細かい動きまでこだわっていただきました。音源テープを発見できた奇跡とノムラメディアスさんの熱意が重なったからこそ、当時のからくり人形時計を再現することができたと思います」 と石田氏は満面の笑みを浮かべた。

イセザキ・モール 1・2St.の日常
ノムラメディアス テクニカルディレクター 小林 敬治
meets

経年進化を目指す、
ノムラメディアスのメンテナンス

からくり人形時計は街に溶け込んでいるため、復元後、からくり人形時計を観るためだけに人が集まったり、大きな歓声が上がったりするわけではない。しかし、いざ音楽が流れると、振り返る人、立ち止まる人、聞き入る人の姿を何度も目にする。
イセザキ・モール 1・2St.は小中学校の通学路にもなっており、小学生の頃からからくり人形時計の音色を耳にしていた20代の方から「復元されて嬉しい」という声もきこえた。「からくり人形時計は、耳を通して地域住民の心に残るものになっており、これからも伊勢佐木町の宝物であり続けるに違いない」と石田氏は話す。
小林は地域住民のエピソードを振り返る。
「復元の過程で、地域のみなさまがからくり人形時計を大切にしていることは、私たちにも伝わってきました」
復元に向け、からくり人形時計の扉を開けて調査している際、通りがかった人から「ついに撤去されるんですね」と残念そうに声をかけられたが、再び動き出すために修復することを伝えると、とても喜ばれたことが印象に残っているという。
「復元した後、年配の方がからくり人形時計を愛おしそうに眺めながら、昔の思い出を懐かしそうに話してくれましたね」
メンテナンスを通してからくり人形時計に対する地域の想いを汲み取り、街の賑わいを蘇らせることが実現した。

  • からくり時計を見つめる小林
  • 最新の映像音響機器を導入
  • 工場での様子

これからも街に賑わいをもたらせていくために、ノムラメディアスは「経年進化」という言葉を大切にしている。今回の復元は、目に見える部分はもともと使用されていたものを継承しているが、目に見えない内部には新しい技術を取り入れる提案を行った。復元前、からくり人形時計は地下ケーブルを通じて、事務所に置かれた制御装置で管理していた。しかし、復元時には技術の進歩によって装置をモニュメント内に収めることができ、標準電波を受信して誤差を自動修正する機能を持つ電波時計に変更。また、耐久性の低い音源テープはデータ化し、レーザーディスクプレーヤーからメディアプレイヤーによる再生に変えている。「ものはつくる時よりも、維持する期間が長いケースがほとんど」だと語るアカウントプロデューサー 今 大輔。10年先、20年先もこの街の宝物であり続けられるよう、受け継ぐものと新しくするものを考え抜いた提案だ。「施設の方が予算を組んでくれるなどして、維持する労力を惜しまずにいてくださるおかげで、私たちもメンテナンスができています」
復元するものに対するクライアントの想いや歴史、それらを汲み取りかたちにするノムラメディアスの情熱と技術とアイデアによって、街に愛されるからくり人形時計がこれからも維持されていく。
からくり人形時計は2021年の復元から、年に一度保守点検を行っている。「毎日午前10時から午後9時まで、30分置きに音楽が流れます。3分の音楽が1日に22回も流れているにも関わらず、故障がないのはすごいことです。われわれの知らないうちに、こっそりメンテナンスをしているのでは無いかと思ってしまうほどです」と石田氏は、メンテナンスの質の高さを評価する。

小林は「メンテナンスすることと新しくつくることの大きな違いは、実際に使う人や見る人が目の前にいるかどうか」と語る。メンテナンスでは既に使っている人や見ている人がいるため、その方々にとって一番良い形になるよう、変化させながら維持していく。今回のからくり人形時計は、変えなくて良いところは絶対に変えないという決意のもと、復元・メンテナンスを行った。
近年の展示はデジタルを活用したものが中心で、からくり人形時計のようにメカ(機械装置)を使ったものは減少傾向にある。
世の中には止まったままのからくり時計が多く存在するが、復元されたからくり人形時計の数はまだ少ない。費用が要因になっているケースもあるが、もう一つの要因として小林はこう語る。「作ってすぐはわれわれ制作側の意図や想いが詰まったもの。しかし、クライアントの元に渡り、動き始めたら、その地域のみなさまのものとなる。制作側は全国各地のからくり時計を手がけるため、作った後どうしても一つひとつの時計への想いは薄くなってしまう現状がある。だからこそ、からくり時計のそばで音を聴き、見守ってくれる地域のみなさまの強い想いを汲み取り、保守・メンテナンスの提案をし続けている」
「からくり人形時計と同様、会社も外からは変わらないように見えても、内部がステップアップしていないと長くは続かない。そうした歴史を生み出しているのは小林さんや今さんの熱意であり、企業風土が作り出しているのだと思う」。そんな石田氏の言葉に、より一層身が引き締まる。
「図面や色見本がなくてもからくり人形時計を復元できたのは、背骨の部分で脈々と受け継がれてきた精神があるからこそ、イセザキ・モール 1・2St.の方々の期待に応えることができました」と小林は語る。これからも技術のみならず、つくった人や関わった人の想いも受け継ぎ、アップデートし続けるメンテナンスを提案し続ける。

meets

見守り続ける街や人の想いも
織り交ぜて、未来へ残す

ノムラメディアス アカウントプロデューサー 今 大輔
  • 当時の色を再現
  • 街に溶け込んでいるからくり人形時計
  • 音楽に合わせて動くからくり人形
  • 再び時を刻み始めたからくり人形時計
CREDIT
  • アカウントプロデューサー:今 大輔
  • プロダクトディレクター:小林 敬治
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その他の実績

ノムラメディアス「11」のソリューション

  1. プランニング

    お客様の想いや課題を分析し、様々なアイデアでコンセプトづくりから詳細なプラン、コンテンツ企画のご提案します。

  2. 設計

    デザインで表現されたお客様の想いをかたちにするため、図面や仕様書を作成し、より具体化させます。

  3. デザイン

    お客様の想いを空間やコンテンツで表現し、具現化します。

  4. 制作・施工

    正しい知識と判断で、品質・安全・環境に配慮しながら制作・施工管理を行い、プロジェクトの実現へ導きます。

  5. 商品開発

    消費者のニーズを調査し、求められる商品を空間のコンセプトやイメージに合わせ、計画・開発します。

  6. POP・ノベルティ

    セールスプロモーションツールやノベルティ企画・制作し、消費者の購買意欲促進につなげます。

  7. 保守管理・メンテナンス

    安心安全な体験・演出を提供できるよう、日々維持管理を行い、点検、修理、機器交換を行います。

  8. イベント運営

    イベントの効果を最大化させるため、空間づくりから集客・接客サポートまでトータルで計画・実施します。

  9. 店舗運営

    店舗コンセプトに基づいた売り場づくりを行い、店舗の世界観を大事にした日々の運営管理を行います。

  10. コンテンツ制作

    映像・造形・キャラクターなど、お客様の事業を支えるオリジナルコンテンツを企画・制作します。​

  11. システム設計・機器設置

    デジタルコンテンツを支えるさまざまな演出システム機器の構築・設置を行います

内部通報窓口 (コンプライアンスに関するご連絡)

乃村工藝社グループでは、不正行為の未然防止、早期発見および是正を図ることを目的に、内部通報窓口を設け、公益通報者保護法に基づいて運用を行っています。
この窓口は、乃村工藝社グループおよびその仕入先、下請業者等の役職員(通報日時点で在籍中または通報日前1年以内に在籍していた役員、正社員、契約社員、嘱託社員、パート、アルバイト、インターンおよび派遣労働者)から、乃村工藝社グループの役職員による乃村工藝社グループの業務における、法令違反行為、社内規定違反行為および企業倫理等違反行為に関する通報(匿名によるものも可)を受け付けるものとして、外部の弁護士事務所内に設置しています。
なお、乃村工藝社グループは、通報者が通報したことを理由として、通報者に対していかなる不利益な取扱いも行いません。
※「内部通報窓口」をクリックしてもメーラーが立ち上がらない場合は​、hotline(at)nomura-g.jpへご送信ください。なお、 (at) の部分を@に置き換えてください。

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