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東北日東工器株式会社

共に悩み、共に挑む。 ひとつのチームとなり築いた 歴史と未来をつなぐショールーム

東北日東工器株式会社
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2社の機能を集約して誕生した
おおざそう工場を
企業の魅力発信の場に

東北日東工器株式会社 常務取締役 工場長 桑原徹也氏<br>※役職名は2026年1月当時
東北日東工器株式会社 常務取締役 工場長 桑原徹也氏
※役職名は2026年1月当時

2025年7月1日、福島市大笹生(おおざそう)に新たなモノづくりの拠点が誕生した。
2024年に株式会社メドテック(山形県山形市)と白河日東工器株式会社(福島県白河市)が合併し、東北日東工器株式会社として歩み始めた、その象徴となる「おおざそう工場」だ。機械工具や環状刃物などを製造していたメドテックと、ドアクローザ、電動ドライバなどを製造していた白河日東工器。両社が培ってきた技術力や生産ノウハウを結集し、その機能を集約した工場は、自然豊かな大笹生の地でひときわ目を引く存在となっている。
「大笹生インターチェンジのすぐそば、道の駅に隣接する立地のため、人の目に留まりやすく、工場に興味を持っていただく機会も増える。それならば、外観だけではなく中身も“魅せる工場”にしていきたいと考えました」と語るのは、工場長の桑原徹也氏。「弊社は主に企業向けの製品をつくっているため、一般の方はどのような会社なのか知らないことが多い。どんな歴史があって、どのような製品をつくっているのか、そこでどんな人が働いているのかということを、より多くの方に知っていただけるように、内部の展示や見学コースをつくっていくことになりました」。
そのデザインや設計等を担当することになったのがノムラメディアスだ。「プロポーザルでのノムラメディアスさんの提案内容がとても良く、実際に手掛けた別企業の展示も素晴らしかったため、ぜひお願いしたいという話になりました」と桑原氏。東北日東工器という企業をどのように表現したら理解してもらえるのか、とにかくわかりやすさにこだわったショールームにしてほしいという依頼から、プロジェクトはスタートした。
そこで、ノムラメディアスが提案したのが、「知る」「触る」「見る」という3つのコーナーを設けることで、企業の魅力を体感してもらうというものだった。
来場者はまず「知る」コーナーの展示を通じて、前身となる企業の創立からおおざそう工場ができるまでの歴史や代表的な製品を学ぶ。続いて、「触る」コーナーで実際の製品に触れ、その魅力を体感する。そして「見る」コーナーでは、「知る」「触る」で積み重ねた知識・体験を背景に、従業員が実際に働いているモノづくりの現場を見学する。一般には馴染みの薄い製品が多い中、この一連の流れを取り入れることで、立場や世代を問わず理解を深めて楽しめる、ストーリー性のある構成となった。

豊かな自然と調和する「魅せる工場」。その顔となるファサードは隈研吾氏が手掛けた(撮影協力:マツイコーポレーション)
豊かな自然と調和する「魅せる工場」。その顔となるファサードは隈研吾氏が手掛けた(撮影協力:マツイコーポレーション)
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従業員が本音を伝え合い
絆を深めたワークショップ

ノムラメディアス プランナー 錦織夏実
ノムラメディアス プランナー 錦織夏実

ショールームの構成については方向性が決まったが、より良い展示内容にするためには多くの従業員の意見や要望を集める必要があった。
プランニングを担当した錦織夏実は「東北日東工器様の特長や魅力を、まずは整理し、言語化していく段階が一番難しかったです。従業員の皆様もこのような展示づくりに初めて関わる方が多く、さらに旧2社の考え方も少しずつ異なっていて、お互いが納得できる内容に落とし込んでいくまでにたくさんの時間を要しました」と振り返る。
この課題を解決するために、ノムラメディアスが提案したのがワークショップだ。
「従業員のリアルな声を拾うための発案でした。山形と白河、それぞれの工場に所属していた皆様に集まっていただき、ワークショップを通じて東北日東工器様の良さや魅力、“東北日東工器らしさ”がどこにあるのかを探りたいと思ったんです」と錦織。
現場の若手従業員を中心に集めたワークショップでは、まず事前に行ったアンケートの結果について、ディスカッションを行いながら深堀りしていった。特に家族と暮らす中堅層では、新工場への期待がある一方で「新しい環境で働くことへの不安」も感じていることが明らかになった。また、「どんな人に新工場を訪れてほしいか」という問いについて、アンケートでは「将来的に採用につながる層」という会社の未来を考えた回答が多かったが、ディスカッションを重ねると「でも、本当は身近な家族や友人たちも見に来てほしい!」という本音も飛び出した。
話し合いを進めていく中で、製品をただ並べるだけでは価値は伝わらないこと、日常では目にすることが少ない製品だからこそ、丁寧な説明が必要だという認識も共有された。従業員一人ひとりのモノづくりへの熱量、そして一緒に働く仲間たちへの信頼の高さが錦織たちの印象に残ったという。

主力製品の魅力やアピールポイントを改めて確認するため、グループワークも実施した。
ドアを自動的にゆっくりと閉める装置「ドアクローザ」について話し合ったチームは、新幹線のトイレや電話ボックスなどの身近な場所をはじめ、トンネル内の非常電話や防火扉など人々の安全を守るものにも東北日東工器のドアクローザが使用されていることを発表。製品の強みとしては、種類が豊富な点や、オーダーメイドにも対応している点などをアピールした。
ワークショップを通じて従業員たちは互いに率直な意見を出し合い、「東北日東工器らしさ」とは何かを確かめ合った。デザイナーの大橋南海は、「実際に製品をつくっている従業員の皆様から、直接仕事に対する誇りや想いを聞くことができて、とても有意義な時間になりました」と振り返る。
桑原氏も、このワークショップは単なる意見交換の場ではなかったと話す。「製造現場の若手従業員が、自分たちの仕事のアピールポイントを他者に話す機会はめったにありません。また、別々の工場で働いていたため会う機会もほとんどなく、お互いの業務が見えない状況でした。今回のワークショップは、互いを知る上でもとても良い機会になったと思います」。
ワークショップに参加した従業員の一部は、その後もプロジェクトに主要メンバーとして参加することになった。「従業員たちがコミュニケーションを取り合い、『新しい工場に行くぞ!』という気持ちで一体感を持つことができました。山形や白河から福島という土地への移動には労力が伴い、不安に思う人もいたと思います。ですが、ワークショップを通じて、自分たちの仕事の魅力をたくさんの人へ紹介したいという意識が芽生え、前向きな姿勢に切り替わる良いきっかけになったのではないでしょうか」と桑原氏は言う。

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わかりやすさと安全性を
追求し、モノづくりの魅力を
伝える展示設計

ノムラメディアス デザイナー 大橋南海
ノムラメディアス デザイナー 大橋南海

各コーナーの設計にあたり、ノムラメディアスと現場の従業員は何度も会議を行い、どうしたらわかりやすいショールームにできるか、試行錯誤を積み重ねていった。
「知る」コーナーでは、メドテックと白河日東工器という異なるルーツを持った2つの企業が合流し、新たな工場で一体となる歴史をまとめた年表を「東北日東工器の歩みとして展示している。年表内には、各年代を代表する“レジェンド”とも言える製品の実機を展示。例えば主力製品のひとつである「アトラエース®」という穴あけ機器が、大型の機械からコンパクトなモデルに変わり、そしてバッテリー式のコードレスタイプへと進化する過程を辿ることができ、製品史も楽しめる。
この年表の掲載内容や展示物を決めるために、大橋と錦織は各地を回り、東北日東工器側との打ち合わせを重ねた。特に、当時の写真や製品を探す作業は難航したという。「山形、白河、東京に分散していた拠点を何度も回って、たくさんの資料や製品の中から年表に入れるものを選定し、まとめていく必要がありました」と大橋は苦労を語る。錦織も「まるで物語の宝探しや発掘作業をしている感覚でしたね」と当時を振り返る。
「触る」コーナーでは、わかりやすさや楽しさだけではなく、安全性も追求した。
「近隣の小中学生も工場に招待し、実際に製品を触って体験してほしい。だから安全を第一に、とにかくケガをしないようにしてほしいとお願いしました」と桑原氏。
例えば、圧縮した空気で塗装などをはがすことができる「ジェットタガネ®」の体験展示では、使用時の振動を軽減するため機械の威力を通常よりも弱めたり、アクリルケースを活用して作動中のニードルに触れないようにしたり、いざというときはすぐに動作を停止できるようにしたりと設計を工夫した。「安全性を高めた上で、製品特性もしっかりと楽しめるように調整するのが難しかったです」と大橋は言う。
また、主力製品のひとつである電動ドライバ「デルボ®」は、電子機器や自動車の組み立てにも用いられ、ねじ締めが終わるとピタッと止まり、止まる際の衝撃も小さいなどの特長がある。その特長を体感してもらうため、実際に締められるねじを6本ずつ設置し、デルボと手回しドライバで“ねじ締め競争”ができる展示を設けた。デルボを吊り下げている「バランスエース®」は実際に工場でも使用しているものだが、安全面を考慮して、来場者の頭にぶつからないように配置等を調整している。この“ねじ締め競争”はもともと子どもたちを意識したアイデアだったが、実際には大人の来場者も楽しんでいるという。
工場見学コースとなる「見る」コーナーは、ガラス張りで設備を一望できるが、広々とした工場空間にあるがゆえに、個々の製品や従業員の手元などは見えにくい。そこで、技術や細かな設備について説明するパネルや映像も制作し、通路に展示した。
これは、東北日東工器側のこだわりでもあった。「学生の方たちも理解できるように、わかりやすい説明をお願いしました。世界に誇れる技術を知ってもらいたい。ただ、公開できない“ノウハウ”にあたる工程もあるので、こちらの要望に応じてその工程の説明は省きながら、それでもしっかりと技術が伝わるように展示をまとめてもらいました」と桑原氏。展示物の言葉選びにも細心の注意を払ったという。「ここの表現は『研磨』か『研削』か…など、一つひとつの言葉にこだわり、内容を検討していきました」。

チーム一丸となってプロジェクトに取り組んだメンバーたち
チーム一丸となってプロジェクトに取り組んだメンバーたち
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企業の垣根を越えた“仲間”として
同じ目線で悩み、共に高みを目指す

東北日東工器 代表取締役社長 千葉隆志氏<br>※役職名は2026年1月当時
東北日東工器 代表取締役社長 千葉隆志氏
※役職名は2026年1月当時

プロジェクト全体を振り返り、桑原氏は「とにかくノムラメディアスの皆さんの熱意やパッションを感じました。細かな部分まで気づいて、さまざまな提案をしてくださったんです」と話す。膝を突き合わせて1日、2日と話し合うことはもちろん、毎週のようにオンライン会議も重ねた。予定時間では話し合いがまとまらず、会議を延長したり、翌日に追加の会議を設定したりと、熱心な議論が繰り返されることも多かったという。「同じ目線で一緒に悩んで、共に高みを目指しながら、ひとつのチームとしてプロジェクトに取り組めたと思います」と錦織。
竣工式の直前までこだわり抜き、完成したショールーム。その想いは来場者にも伝わり、「皆さんに素晴らしいと言ってもらえて、本当に嬉しかったです」と桑原氏は言う。
特に好評なのは「触る」コーナーで、“ねじ締め競争”はもちろん、ドアクローザの展示にも想像以上の反響があるという。
「目立たないけれど身近な場所で活躍する技術を、しっかりと内部構造まで見せることで、『これが日東工器の技術だったんですね』と感激される。ドアを見かけたらドアクローザを確認するようになったという方もたくさんいらっしゃいます」と桑原氏。
また、「見る」コーナーの通路には、工場の自動化設備についてまとめたパネルを制作し、展示している。自動化は効率や生産性だけが目的ではなく、「暑さや危険を伴う作業をロボットで自動化し、従業員の安全を確保するため」であることを伝える内容で、来場者からも「従業員を大切にしている会社だと伝わった」と反応があったという。「日東工器グループが経営方針として掲げる『社会への貢献』、そして『従業員の幸福』が、展示を通じて体現されていると実感しています」と桑原氏は語る。
工場の今後の展望については、「人は8時間、機械は24時間」というコンセプトで引き続き効率化を進め、従業員に負担をかけない自動化工場を目指す。「ここから世界中に羽ばたく製品を作っていきたい。日東工器本社が取り組んでいる製品の開発・設計に追いつけるように、生産効率もどんどん上げて、日東工器グループのマザー工場として東北日東工器を育てていきたいと考えています」と桑原氏は語る。すでに海外からの問い合わせや来訪も増えてきていると言うが、「地域の子どもたちも招待して、展示を通じて東北日東工器の製品に興味を持ってほしい。世界に誇る技術に実際に触れてもらうことで、将来ここで働きたいと思えるような好循環を生みだせたらと思います」。
代表取締役社長(当時)の千葉隆志氏も「参加メンバー全員が納得いくまで、最後の最後までディスカッションを行い、素晴らしいショールームが完成しました」と振り返る。「このショールームにより、東北日東工器がどのような環境で、どのようにモノづくりをしているのかを知っていただき、モノづくりの楽しさや素晴らしさを直接感じていただけるようになりました。 「知る」「触る」「見る」体験を通じて、地域に根差した企業を目指すとともに、おおざそうから世界へ向けて日東工器グループの技術力を発信していきたいと考えています」。
山形と白河、2つの拠点で培われてきた技術がおおざそうの地で融合し、新たなる一歩を踏み出した東北日東工器。従業員たちのモノづくりへの想いを伝えるこのショールームは、地域の新たなコミュニケーションの場となり、歴史と未来をつないでいく。

Project Member
プロジェクト
マネージャー
坂本 貴司
アカウント
プロデューサー
小濱 俊一郎、北川 晶夫
プランナー
石井 泰二、錦織 夏実
デザイナー
大橋 南海
テクニカル
ディレクター
岩間 智史
制作
熊澤 勇汰、宮崎 晴勝、稲葉 聡
プロジェクト開発
高田 亘、長島 彩乃
Solution
  • プランニング
  • 設計
  • デザイン
  • 制作・施工
  • コンテンツ制作
  • システム設計・機器設置
Project Year
2025.07~