WORKS
ノムラメディアス meets 未来館
未来を感じる購買体験
ノムラメディアスがてがける
次世代型ミュージアムショップ
イベント&ショップマネジメント
2023.11-
先端の科学技術を体験できるサイエンスミュージアム、日本科学未来館(以下、未来館)。2001年の開館以来アップデートを重ねながら、現在進行形の科学技術による気づきや学びをお客様に提供している。2023年11月、1階のミュージアムショップ「Miraikan Museum Shop(以下、Museum Shop)」がリニューアルオープン。このリニューアルを先導し、現在も運営に携わっているのがノムラメディアスだ。
2021年に浅川智恵子が館長に就任し、指標として掲げた「Miraikanビジョン2030」では、「未来社会に向けた先端技術の実証実験を体験する、『未来社会の実験場』を目指す」と宣言されている。新しいミュージアムショップもまた、その延長線上に位置付けるものとしてデザインすることが求められた。日本科学未来館の小関美穂氏(当時担当者)は「未来では当たり前になるかもしれない技術やサービスに『お土産を買う』という体験を通じて触れ、一人ひとりが未来を考えるきっかけにしてほしいと考えていました」と公募の趣旨を振り返る。
ノムラメディアスは、アカウントプロデューサーの鈴木泰宏が中心となりMuseum Shopの企画に着手した。コンセプトは「Goodwill +be」。Goodwillは善行、ひいては思いやりに通じる言葉である。それに未来を示す表現「will be」をかけ合わせ、思いやりに溢れ、かつ未来につながる店舗にしたいという思いを込めた。
たとえば、館内でひときわ目を引く黄色のサインは、鈴木が点字ブロック(視覚障害者誘導用ブロック)に着想を得たもの。「開かれた場」を象徴する色として黄色をキーカラーに採用した。
もっとも、未来館の色といえばロゴにも採用されている白と青で、館内の配色もそれにならって調整されている。社内検討段階から、「なぜ黄色なのか」「他の色にすべき」という意見も少なくなかったが、鈴木は先の着想に加えて黄色が色彩心理学において「未来への希望」を示す色とされていることを補足し、提案を押し切った。この思い切った提案には未来館も驚いたというが、事実、来館者の反応は上々。「黄色を入れていただいたことで空間が明るくなったように感じます」と小関氏も納得の表情を浮かべる。
思いやりと未来を感じる、
すべての人に開かれた
日本科学未来館の
ミュージアムショップ
店舗内の什器を見ると、大半が角を丸めてあることに気がつく。これも「回遊する際に安全に楽しんでほしい」という思いやりから生まれた工夫だ。また、什器や商品の一部には廃材を活用しており、特にライスレジンと呼ばれる廃米を使ったバイオマスプラスチックの文具商品は、「間接的に地域復興にもつながる」と好評を博している。鈴木は「未来に限らず、新しい体験の一環として取り入れた」と語り、こうしたプラスアルファの提案がMuseum Shopに新たな価値を生み出していることは間違いない。
前店舗でも好評だったミドリムシクッキーは、パッケージをリデザインして引き続き販売。店舗の運営を担当するアカウントプロデューサーの小沼義和は「小学生のお客様も多いと伺っていたので、手に取りやすく可愛らしいデザインになっています」と解説する。新しくオリジナルグッズに加わった、スローガン「Mirai can_!」をカラフルにあしらった商品も修学旅行などで訪れた学生団体に好評だという。
「未来館らしいものをお土産に、というお客様の気持ちに寄り添った商品開発には今後もさらに期待しています」と小関氏。それに対し「多くの商品開発の場合、クライアントはある程度企画が固まると、後は承認を得る作業になっていく。商品開発にアイデア段階から関わってくれる小関さんのような心強いパートナーがいてくださったからわれわれも注力できたのです」と鈴木は返す。良好な関係性を築きあげたことがプロジェクト成功につながった。
「未来社会の実験場」として、
先端技術を積極的に採用
未来を感じさせる購買体験として、Museum Shopを象徴する設備の一つは無人決済だろう。社会ではおもてなしや人とのふれあいの価値が見直されているが、同時に人材不足が叫ばれている。特にお台場エリアでは求人への応募が少なく、実現は難しい。「今この場所に必要なのは、無人でも豊かな購買体験を提供すること」。そう考えた鈴木は、高輪ゲートウェイ駅(JR東日本)で無人AI決済店舗を手掛けたTOUCH TO GO社に協力を仰いだ。
天井に設置したカメラで顧客の動向を感知し、棚のセンサーが商品を取った際の重さの変化を感知する。多角的にお客様の行動をフォローし、安全かつスムーズに会計を完了させるシステムは聞けば聞くほど合理的で、迷わず提案に盛り込むことを決めた。
セルフレジはコンビニやスーパーなどで利用する機会が増えてきているが、TOUTH TO GOのような本格的な無人決済の普及はまだこれから。「他ではあまり体験できないものを取り入れてほしい、というオーダーをしていたので、この提案は魅力的でした」と小関氏は当時の率直な感想を語る。もちろん、無人決済には運用面の不安や懸念がなかったわけではないとしながらも、「接客サービスが進化していく未来をイメージしやすい提案で、期待を寄せることができた。実験にはリスクが伴うもの。積極的なチャレンジが『未来社会の実験場』としての役割」と続けた。
無人決済システムは好評で、好奇心旺盛なお客様が多く利用している。様子をうかがいながら入場したお客様も、会計時は歓声を上げながら購買体験を楽しんでいる姿がしばしば見られた。
Museum Shopに導入された先端技術は無人決済だけではない。非実在のデジタルヒューマン中川 実玖(なかがわ みく)がガイドとなり、4言語でおすすめの商品を提案する「多言語対応デジタルヒューマンサイネージ」もまた、これからの社会で可能性を模索する新たな体験サービスだ。さまざまなデバイスで、店舗における新たなコミュニケーションを模索する工夫が施されている。
また、Museum Shopの一部は、先端技術を持つ企業向けに実験ブース(PRスペース)として貸出を行っている。本来であれば少しでも多くの商品を置いて売りたいはずだが、「Museum Shopも未来館の展示物だと思っている。常設展があれば特別展もあるように、商品の入れ替え以外にも『何かが起こっている』という要素を加えたかった」と鈴木はその意図を語る。事実、店舗の一角というオープンな空間を使って先端技術に手を加える光景は遠くからも目を引く。興味を示したお客様がブースに立ち寄り、その結果、Museum Shopでも購買をしていくという連鎖も生まれている。
当初、Museum Shopのオープンはもう少し後になる予定だった。しかし、未来館の新たな展示が複数同時に公開されることとなり、内覧会なども行われ注目が集まる機会となることから、新ミュージアムショップの披露も同じタイミングで合わせられないか、ということで急遽オープン日を早めることとなった。
これまで数々の難題をクリアしてきた店舗運営 、ショップマネジメントのプロフェッショナルとして、断るわけにはいかない。共に新たなMuseum Shopを作り上げてきた「仲間」の頼みであればなおさらである。隔週で定例ミーティングを実施し、こまめなコミュニケーションを続けてきたノムラメディアスであったが、スケジュールの変更によりさらに体制を強化。レスポンスをより早め、時間短縮と細かな課題の早期解決に努めた。かくして2023年11月22日、新たな「Museum Shop」がオープンした。
プロジェクトを振り返り、小関氏は「未来館の考えや目指すものを理解するスピードが早く的確で、私たちが伝えたいこと、したいことをよく理解してくれていた。要望への対応力、修正力も高く、とても助かりました」と評価する。
一方、鈴木は「クライアントからしてみればこなれているように感じていただけたかもしれませんが、社内では必死でしたよ」と笑いつつ、「ノムラメディアスはモノづくりの会社であり、工程、納期、予算、協力企業、すべてをディレクションすることはわれわれが年間何度も行っていること。その蓄積が結実したプロジェクトだったと思います」と振り返る。ノムラメディアスは先述の通り店舗運営 、ショップマネジメントのプロフェッショナル集団で、無数のプロジェクトを並行して進めている。制作を進める上で社内から厳しいレビューが入ることも珍しくない。しかし、だからこそスピード感を保ちつつ(むしろ高めながら)、クライアントの意図やニーズをキャッチした精度の高いアウトプットが実現したのではないだろうか。
Museum Shopがリニューアルオープンして約半年、チームの目線はすでに今後の展望へと移っている。小関氏が「新しい展示に関連したオリジナルグッズを作りたい」と言うと、小沼は「もちろん」と間髪入れず答え、月面探査機が月に着陸したニュースを例に挙げて「未来館に関連する出来事が起きた際、売り場にも関連コーナーを設置してお客様と対話できる店舗にしたい」と加えて提案する。
またリニューアル直後、店頭で「ショップが新しくなっている、面白そうだな」と話すお客様の声を耳にしたという小沼は、「事業者が変わったこと、リニューアルしたことを把握しているのは館員などごく一部のはず。一般のお客様にも『面白い、良くなっている』と感じていただけたということは、従来の期待を超えることができたのではないかと思っています」と手応えを感じている。
鈴木は「博物館や美術館で展示を見たときの感動や情熱は、そのままにしていると冷めてしまう。展示の最後に、それらを物に託して持ち帰るのがミュージアムショップの役割。展示の終着地として、本来のミュージアムショップの役割の第一歩は踏み出せたかなと思います」と達成感をにじませた。
小関氏は「今後、Museum Shopを目的に未来館へ来てくれる人がいたら嬉しい。これからの進化にも期待しています」とノムラメディアスの両名へエールを送った。
店頭に並ぶ商品からさまざまな先端技術、サインの色に至るまで、このMuseum Shopには「意味のないもの」が存在しない。商品、空間、サービスが連動した設計によって、この空間に訪れたお客様が何を体験できるか、未来館においてどのような価値をもたらすか、徹底的に考え抜かれている。それがノムラメディアスの目指す「体験価値を最大化する」ということなのかもしれない。
展示のリニューアルに
合わせた短い施工期間でも
理想の店舗を実現
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CREDIT
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- 店長:佐藤 史歩
- アカウントプロデューサー:鈴木 泰宏
- プロダクトディレクター:河端 利明
- 運営:小沼 義和
- デザイン:ネイバー株式会社(小林 圭介)
その他の実績
ノムラメディアス「11」のソリューション
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プランニング
お客様の想いや課題を分析し、様々なアイデアでコンセプトづくりから詳細なプラン、コンテンツ企画のご提案します。
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設計
デザインで表現されたお客様の想いをかたちにするため、図面や仕様書を作成し、より具体化させます。
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デザイン
お客様の想いを空間やコンテンツで表現し、具現化します。
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制作・施工
正しい知識と判断で、品質・安全・環境に配慮しながら制作・施工管理を行い、プロジェクトの実現へ導きます。
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商品開発
消費者のニーズを調査し、求められる商品を空間のコンセプトやイメージに合わせ、計画・開発します。
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POP・ノベルティ
セールスプロモーションツールやノベルティ企画・制作し、消費者の購買意欲促進につなげます。
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保守管理・メンテナンス
安心安全な体験・演出を提供できるよう、日々維持管理を行い、点検、修理、機器交換を行います。
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イベント運営
イベントの効果を最大化させるため、空間づくりから集客・接客サポートまでトータルで計画・実施します。
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店舗運営
店舗コンセプトに基づいた売り場づくりを行い、店舗の世界観を大事にした日々の運営管理を行います。
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コンテンツ制作
映像・造形・キャラクターなど、お客様の事業を支えるオリジナルコンテンツを企画・制作します。
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システム設計・機器設置
デジタルコンテンツを支えるさまざまな演出システム機器の構築・設置を行います